さいちゃん、銀行辞めたってよ

メーカー経理マンの日常。元銀行員。時々音楽と転職の話。

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結婚式をすっぽかした馬鹿野郎に愛のない天誅を

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結婚式は一生に一度のメモリアル。だが今年の1月、私の親友の大事な結婚式をすっぽかした馬鹿野郎がいた。

 

その男とは大学で同じクラスだった。それなりに真面目に勉強しなければ入れない大学ではあったが、その集団の中でも群を抜けて頭の良い男だった。

 

だがその男は見るからに変わった男だった。形容するには筆舌し難いが、ガリガリでその少しだけ大きい目はいつも明後日の方向を見ていた。あまりに明後日の方ばかりみるので、そいつの目にだけ死神リュークが見えているという噂がいつの日も絶えなかった。

 

大学では私が冒頭で申し上げた親友を含め基本的に4人グループで行動していたのが、その男はいつの間にか私たちのグループに時々入ってくるようになった。

男は見るからに奇怪な男だったし、私たちのグループに近づいてくるまでは誰かと一緒にいる所を見たことがなかった。

 

つまり我々は、見るからに奇怪で死神リュークが見えている謎の変人と初めて話の出来る悲劇のグループだったのかもしれない。

 

男は誰もが驚愕せざるを得ないくらい字が下手だった。

その男が書く字は誰もが解読できなかったため、きっとメソポタミア文明が生み出した最終形のくさび方文字であると結論付けられた。なまじ頭が良かったがゆえに過去の文明に遡って字を書くほどの変人だったのだ。

 

私と親友は、難題のレポートが出されて困ったときはとりあえず男に見せてもらいにいったものだが、現代に生きる我々がくさび形文字を解読する術はなく「なんだこいつ使えねえ」と言わざるを得なかった。

 

腹いせといっては何だが、腹が減ったときはその男の家に行ってお好み焼きをよく作ってもらっていた。我々がお好み焼きが食べたいというと「作るよ」となぜかむしろ嬉しそうにしていた。なぜその時お好み焼きが食べたかったのかはわからない。

 

男の部屋には何もなかった。家具も必要最小限の物しか置いていなかった。

だが何故か男の部屋には立派なピアノが置いてあった。男はピアノが弾けるらしい。

 

この何もない部屋に不自然に置かれたそのピアノに、我々はさすがに興味を示さずにはいられなかった。もしかすると男は幼少期からピアノを習い続けかなりの腕前なのかもしれない、と。

 

男は自分から弾くことはしなかったが、一度私たちは頼んで男にピアノを弾いてもらったことがある。

期待を震わせて聴いた曲は、かの名曲「猫踏んじゃった」だった。

 

我々は怒り狂った。期待させやがって。それから我々は男の家に行くのをやめた。

代わりに自分の家にゴキブリが出たときは男に電話してわざわざ呼び寄せ、退治させるようになった。

 

私とその男との大学での最後の絡みは、おそらく前述のゴキブリ撃退事件が最後だったと思う。

そこからは親友に聴いた話だが、男は大学の勉強だけで飽き足らず、英語の勉強をしてTOEICでは満点に近い900越えの点数を取るようになり1年間アメリカに留学した。

 

大学卒業後はアメリカで身に着けた語学力を外資系企業に就職しさぞグローバルに活かすつもりなのだろうと思われたが、英語を使うことなどない地元の電力会社に普通に就職した。我々は忘れていたようだ。男は根本から変人だった。

 

私とはすっかり疎遠になっていたものだが、私の親友とは極稀に連絡を取っていたようだ。地域は違えど親友も電力会社に勤めているため、何かしらの接点もあったのかもしれない。

 

そして話は変わるが、今年の1月、親友は結婚披露宴を挙げる運びとなった。私は友人スピーチを任されていたため、緊張しつつも式が始まるのを楽しみに待った。

披露宴の席次表には男の名前も書かれてあった。私の前の席だ。

だが式が始まってからも男は姿を見せなかった。

 

不安に駆られた私は携帯の奥底に封印したはずの男の電話番号を探し、かけてみた。

男は慌てた様子で電話に出て、式の日取りを勘違いしていたと語った。

今から新幹線で向かうが間に合うだろうかと言った。

男の住まいは岡山で、会場は福岡だ。間に合うわけがない。

 

私はもう怒りさえ湧き起こらなかった。この男の行動など人間のそれではないのだ。

「人はこうあるべき」その極対にいるのが男だった。私は、そして親友も、そのことをただ忘れていただけだ。

 

書留でご祝儀だけ送るようにと告げ、私は式に戻った。

スピーチを無事こなし、式は終始幸せな雰囲気で幕を閉じた。

 

 

それから数ヵ月後、男から連絡がきた。今度出張で福岡に行くから会おうとのことだった。それが昨日のことだ。久しぶりにあった男は誰かわからぬほど太っていた。

ライザップのCMを逆に戻すバージョンが存在するなら間違いなく彼はそのオーディションに合格するだろう。

 

男と飲むのは初めてだった。私は生ビールを、男はウーロン茶を頼んだ。

男は酒が1滴たりとも飲めないのだと語った。

2人で飲みにいって自分だけ飲むのは、仮に相手が飲めない人間だとしても気持ちのいいものではない。

だが男はウーロン茶を飲み干したあと、「そろそろちゃんと飲もうかな」といって店員を呼んだ。なんだ本当は飲めるのかと思ったのも束の間、男はメニューを眺めながら「水」を頼んだ。

 

私には理解ができなかった。ちゃんと飲もうかなの先に水という選択肢が現れるなんて、もはや人智を超えている。まるで宇宙人だ。私の周りには宇宙人しかいないのか。

 

男との飲みはまったくもって楽しくなかった。この時間が惜しい、そう思った。

だから私はわざわざ出張の前日に有給を取って私に会いに来てくれた男に対し、嫁から急用で電話がかかってきた振りをして、1時間で切り上げて帰った

 

 

もう男と会うことは二度とない、そう思う。

親友の結婚式をすっぽかしたその男の罪は深い。

今後の人生に多大なる不幸が襲い掛かり、いかんともしがたいEDに悩み苦しみ果てる男の未来を願うばかりである。 

 

 

(fin)

 

 

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