さいちゃん、銀行辞めたってよ

元銀行員。転職 音楽 読書 日記 etc.

MENU

上司が部下を誘っておいて奢らないのは正義なのか悪なのか

f:id:negitoro1222:20180425225616j:plain

 

「週3」で飲み会があった銀行から「年3」の飲みの会社に転職してからというもの、圧倒的にアルコールに弱くなった。

 

「継続性の原則」なるものはアルコール耐性にも適用されるのだと思う。やはり適度に飲み続けていた方が耐性的にはいいのではないか。今体感的に弱く感じているのであればきっとそうだ。科学的根拠なんてそんなものは知らないが。

 

 

昨日は前職で一緒に働いていた人たちと久しぶりに飲みに行って来た。

メンバーは私を含め7人。メンバーはこんな感じだ。

 

・支店長

この人の号令で今回の飲み会が開催されることとなった。仕事は厳しいが、プライベートではとても良い人。

 

・先輩

仕事は優秀で若手の研修で先輩として講話を任されるほど人事評価も高かったが、最近転職した。転職先の雰囲気がぬる過ぎて若干不満の模様。

 

・同期

入行店舗が同じでずっと仲の良い同期。荒波の金融業界をノリだけで渡りきっている。勉強は全然できないが、何故かFP1級を持っている(試験官に賄賂を渡した事実を一向に認めてくれない)。銀行最大の賞を取って10万貰った経験がある。口癖は「俺手取り18万」

 

・後輩A

大学から付き合っていた彼女に去年4度目のプロポーズを果たし(過去3回は全て未遂に終わる)、晴れて結婚が決まった。顔合わせも終わったのに、実際結婚するのは来年らしい。遅くね?

 

・後輩B

営業は滅法強いが、事務が絶望的に弱い。彼が一度電話セールスをすれば、ローンでも投資信託でも何でも取ってくる奇跡の営業力を持っている。だが事務に不備がありすぎて修正のために莫大な時間をかけ、取ってきた成果以上のマイナスを支店にもたらす絶望的なまでの諸刃の剣。

 

・後輩C

同棲していた彼女に浮気され別れることになり一緒に住んでいたアパートを出たのだが、今もそのアパートに住み続けている元カノに何故か家賃を半分払わせられ続けているという悲劇の持ち主。ちなみに同棲中に100万の犬(元カノの一目惚れ)のローンを組ませられて払い続けている強者だ。

 

 

と、個性豊かな20代の若手6人と歳の離れた支店長との飲み会だった。

正直何の話をしたのか、今必死に思い返しても思い出せない。

会社の飲み会なんてものはそんなものだ。

 

会社の愚痴を言い、上司の愚痴をこぼし、俗世間への愚痴を吐き、そして飲みすぎてはその口から酒を吐く。実のある話など何一つない。

だがそれが心地良い。

 

確かに時間を無駄にしていると思うこともある。

この1回の飲み代でもっと他の実のある経験が出来たのではないかと思うこともある。

それでもよい。

仲の良い仕事メンバーと一緒の時を楽しむのは貴重な時間だ。

 

だが事件は会計の時に起こった。

警察官が警察官を射殺する世の中だ。

今から話す事件など取るに足らない些事ではあるが、一応話しておこう。

 

会計は35,000円くらいで一人5000円程度だった。

そのお店の滞在時間は2時間半ほど。やや高いとは思ったがまぁそんなものだろう。

普通の飲み会なら、給料を高く貰っている役職の人や先輩が多めに出すものだが、これはプライベートの飲み会なのだから別に割り勘でかまわないと思った。

 

だが支店長は違った。

一番年下の後輩Bと後輩Cに向かって「お前らは若いから少なめでいい」と言った。

さすが支店長だ。この場で圧倒的に地位が高く、年収1200万ほど貰っているお方だ。

考えてみると支店長の誘いでこの飲み会が開かれたのだ。プライベートな飲み会とはいえ、若手のために多めに出してくれる。みんな期待に震えた。

 

そしてその場で誰もが思った。私も瞬時に計算していた。支店長は1万円出すと

年収は私たちの2倍から3倍近くある。役職のある人が1万円出すのはよくある話なのだ(自分がその立場だと思うと恐ろしいのだが)。

 

 

 

そして支店長は財布から取り出した。

1000円札を、7枚

 

 

 

私たちは一瞬の拘束の後、平静を装った。

みんな目を合わせなかった。

 

(7,000円?え、逆にどゆこと?)

(BとCに1,000出したということで合ってる?)

(1,000円くらいならもう割り勘でよくね?)

(なんなら俺7,000円出すけど支店長の立場ないよね?)

 

そんな心の会話を短い会計の時間に私たちは繰り広げた。

目も合わせずに、心でだ。

 

だが私たちはサラリーマンだ。転職している者が2名いるが関係性は変わらない。

「支店長、ありがとうございます!」全員が元気な声で笑顔で言い放った。

 

BとC以外は何の恩恵も受けていないが、もう何だっていい。

少しでも支店長を気持ちよくさせなくてはならない。

不満など1ミリたりとも顔に出してはならない。

 

「楽しかったです!支店長お誘いありがとうございました!また集まりましょう!」

誰が言ったかは覚えていないが、生粋のサラリーマンの魂を持った男が言い放った。

さすがだ、さすがすぎる。もう支店長は気持ちよくなってくれただろう。

 

 

別にいいんだ。奢ってくれることを最初から期待していたわけではない。

奢ってもらわなくてもいい。多めに払ってもらわなくていい。奢られるなんて甘えだ。いつまで甘えている。

お前らは社会人になって何年目だ。これから上の立場になっていく。

甘えた心など今すぐ捨ててしまえ

 

そう、 支店長は行動で示し、言葉で言わずとも教えてくださったのだ。

「上司や先輩と飲みに行って奢ってもらえるかもしれないと少しでも期待する心は間違っている」と。

 

その通りだ。まったくもって支店長は正義だ。

 

 

そして支店長は帰られた。

残った我々は6人でもう一軒軽く居酒屋に行った。

会計は10,000円だった。

一番上の先輩が言い放った。

「俺5,000円出すからみんな1,000円でいいよ」

 

 

誰が一番正義だったのか、それは言うまでもない。

 

(fin)