さいちゃん、銀行辞めたってよ

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拝啓銀行様 今まで大変申し訳ございませんでした。これからも応援してます。

GWの中日、妻に一本の電話がかかってきた。知らない番号からだった。

妻は知らない番号から電話がかかってきたら、いったん出ずにその番号をネットで検索する。どこの番号かわかり、安心なところからであれば2回目に取る手段を取っている。

 

その日も同じだった。ネットで検索してみた結果、その電話は銀行からだった。GW中ではあったが、その日は平日なので銀行はカレンダー通りに営業している。

何事?と、妻は不安になったようだった。最近銀行に行った記憶といえば、昨日通帳を記帳しにATMに行ったくらいだという。窓口には行っていないと。

 

私はそんな不安に駆られる妻に優しく声をかけた。銀行で5年働いていた私だ、ある程度の内部事情は把握している。

 

「気にしないでいいよ。奴らは悪魔なんだ。定期が満期なので粗品がございますだとか、キャンペーン中で積み立ての良い商品がございますだとか、高齢の小金持ちに狙いを絞っては甘い言葉で窓口に誘(いざな)って金融商品を売りつけてくる詐欺師集団、それが銀行さ。

今はGW中だから若者も銀行に来れると思って、20代の若い人のリストを作り片っ端から個人年金保険や医療保険のセールスをしているんだろう。浅はかな考えさ。電話には出ないほうがいい」

 

なるほど、と妻は納得してくれたようで安心感が顔に広がっていた。もうこれで大丈夫、さぁせっかくの休みなんだからどこかへ出かけよう。

するとほどなくまた電話がかかってきた。同じ銀行からだ。

 

おいおいまたか。銀行さん熱心なのは認めるが、ちょっとしつこいんじゃないか?

GW中に休みを満喫したいと思ってる顧客に対し、過度にセールスしてくるのはいかがなのものか。以前は銀行員として働いていた私だが、今となっては顧客の立場。

顧客の都合というものも考えてもらわないと困るだろう。

 

私は妻に電話に出ないように言った。「無視していいよ、気にしない気にしない」

 

そして1時間が経った頃だったか、二人で昼食をとっているときにまた電話がかかってきた。銀行からだ。

 

さすがに私も腹が立ってきた。いい加減にしてもらえないか。何度電話してくれば気が済む。大方、資産運用係に配属された新人が、「顧客が電話に出るまでセールスし続けろ」とでも上司に命じられたのだろう。だがいくらなんでもしつこすぎる。これは一言言ってやらねばならない。

 

ついに私は妻に電話に出てもらうように言った。電話口から女性らしい銀行員の声が聞こえる。投資信託だの、保険だの、セールスを匂わす言葉でも言ってみろ。

今日貴様の支店がオペレーションで処理した全ての伝票を、何て書いてあるか読めないように切り刻んでやるぞ!

 

その覚悟で電話を聞いた。電話越しの女性は名前を名乗り、今お時間よろしいでしょうかなどと聞いている。この休み中にいいわけがないだろう。私たちはせっかくの休暇を楽しんでいるのだ。

「休み中であれば客は電話に出る。きっと暇だろうから電話してしまえ」などと甘えた考えは捨て去れ!この女性銀行員にはやはりお灸を据えねばならん!たとえかつての同胞だろうとも、言いたいことは言わせて貰う!!

 

そして女性は続けた。

 

「昨日ですが、ATMコーナーにお客様のお通帳がお忘れになっておりまして。早く連絡を差し上げないといけないと思い、何度もお電話してしまいました。申し訳ございません」

 

 

・・・

 

 

・・・なんてことだ。

 

 

私は胸を鋭いもので貫かれるような衝撃を感じた。

銀行が平日の昼間に電話してくるなんてセールス以外の何物でもないと信じて疑わなかった。それがどうだろう。こんな感謝しかない電話があっただなんて。

 

いつから私は人や物事を、いいや、世界を、疑うようになってしまったのだろう。

生後間もない頃の私は純粋無垢の権化であり、芦田愛菜や橋本環奈の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、邪念のかけらもないその笑顔は郷里の山野を愛の光で満たしたと言われる。

 

それがいったい何がここまで私を変えてしまったのだろう。今や猜疑心の強さにおいては私の右に出るものはいないとまで言われる。悪魔は私の方ではないか。

 

女性は続けた。

「お通帳は書留でご郵送した方がよろしいでしょうか。大切なものですので、登録のご住所は遠くないですからお届けに参りましょうか」

 

止めてくれ...。

もうこれ以上私の心をナイフで突き刺すのは止めてくれ...。

もう耐えられない。もう辛いんだ。

 

私が悪かった。全ては私が悪かった。

純粋な銀行員の方の親切心を、私は何度疑ったことか。あろうことか、必死に働く銀行の処理した伝票を全て切り刻むなど、万死に値する

 

どう償えばいい。この疑り深い私の心や精神は悔い改めねばならない。

だがとにかく今すぐ謝らなければならない。

 

拝啓銀行様

 

お元気ですか。私は元気ではありません。つい今しがた、貴方様のところでお勤めになられる従業員様の正義の剣(つるぎ)によって、私の胸が串刺しにされたところでございます。

 

今までの非礼を詫びさせて下さい。誠に申し訳ございませんでした。

これからは深く反省し、まずは電話に出てから正悪の判断をしていこうと思います。

ただ、以前書くと宣言した「銀行を辞めた方がいい100の理由」は書かせてください宜しくお願い致します。

 

敬具

 

(fin)

 

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