さいちゃん、銀行辞めたってよ

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『桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ』を読んで ※ネタバレあり

恥ずかしながら、まだ一度も読んだことがなかった朝井リョウの小説を読みました。「桐島、部活やめるってよ」。

 

まず懺悔したいのだけれど、自分のブログのタイトルが「さいちゃん、銀行辞めたってよ」と明らかにタイトルをパクっているにも関わらず、小説を読んでいなかったことに対して大変申し訳ございませんでした。心から申し訳ございませんでした。

 

せっかくなので、読んだ感想でもここに書き記しておこうかと思います。

※盛大にネタバレします。ご注意を。

 

「桐島、部活やめるってよ」 感想

 

第22回小説すばる新人賞受賞した朝井リョウのデビュー作。早稲田大学在学中に書いた作品ということです。小説を書こうと思う人は、社会人になるとなかなか時間も取れないだろうから学生時代に書くものなのでしょうかね。社会人から書き始めたり、主婦が書いてデビューする話も聞くけれど、いずれにせよ学生が小説を書いて賞を取るというのは純粋に凄いことだと思います。

 

結論から言うと、この小説僕は好きです。読みやすい文章ですらすら読めます。僕は普段どちらかというとミステリ小説を好んで読むけれど、実際あまりこだわりはなくて恋愛小説や歴史小説も読みます。この本は青春小説?友情小説?ジャンル分けするとそういうものになるのかな。

 

バレー部のキャプテン桐島が突然部活を辞める事で波紋が広がる学生たちの心情を描いていくストーリー。物語に桐島本人の心情は描かれず、5人の語り手の視点から桐島の人物像は語られます。

 

ここからは盛大にネタバレなのだけれど、桐島ってバレー部のキャプテンで部員をちゃんと叱るタイプの人。同級生とか副キャプテンも勿論関係なく。だけどあまりのきつい言い方に部内で不協和音が発生してしまって、あからさまな嫌がらせなんてものはなかったけれどどことなく桐島を避ける雰囲気があり、それに耐えられなくなった桐島は部活を辞めてしまう。

 

そして物語で特徴的なのは、いわゆる「カースト」の話。中学とか高校とか、クラス内でかっこよかったりかわいかったりとにかく目立つ人ってのは目立つ人同士で固まったり、逆にそうでない人はそうでない人と固まったりするあの現象。小説では上位グループ、下位グループなんて露骨な言葉で表現されているけれど、それはきっとどの学校も同じで。

 

高校生の生々しい独特な人と人との間隔、間合い、空気、その辺の描き方が朝井先生はとても上手で、僕も何となく高校時代を思い出しました。読めば誰もが当時を思い出すような、ドキッとするような感覚を覚えるんじゃないかなと。

 

ただ読んでいて残念だったところが3点ほどありました。

 

①桐島が付き合っている彼女が残念な子だったこと。

 

桐島が付き合っている彼女はカースト上位の目立つかわいい女の子なのだけれど、その子は外見はいいけれど、他人を思いやる配慮に欠けていたり、周りに聞こえるくらいの声量でクラスの男子を馬鹿にしたり、元々同じグループにいた女子を弾き出してしまったりする子で、内面が良いとはお世辞にも言いがたい子。

 

なんでしっかりしてる桐島がこのアホな子と付き合ってんの?外見で選んじゃってるの?桐島、お前ちゃんとしてるイメージで出てきたんだからちゃんとした子と付き合えよ?

 

って、思います。まぁ小説だからそこに文句を言ってもしょうがないのだけれど、でも人物のイメージと合わせてほしかったなと。

 

②東原かすみの心情を描いてほしかった。

 

中学時代、クラス下位グループの前田涼也と映画が好きという接点からクラス上位グループの東原かすみは仲良くなります。一緒に映画に行ったりするほどの仲に。だけどクラスが変わって話すきっかけがなくなり疎遠になっていたところ、高校で同じクラスになって再開します。

 

高校では東原かすみは上位グループに位置しているのだけれど、この子は他人を思いやれる優しい子という立場で描かれていて、だけど下位グループの前田涼也とは話していない。前田涼也が所属する映画部で賞を取っても、その表彰式の時は友達と話していてちゃんと見ていません。

 

おそらく関心はとてもあるのだろうけれど、上位の友人が映画部を馬鹿にするものだから彼女たちに合わせて話しかけにいけなかったり、ちゃんと表彰を見られなかったり、そういう心境があったと思います。その辺を描いてほしかった。

 

文庫本では14歳の頃の東原かすみのストーリーがありますが、それは本編とはあまり関係のないストーリー(前田涼也に最初に話しかけるに至るまでの物語)だったので、できれば高校生の時の心境が見たかったなと。そこはあまり桐島とは関係がないから描かなかったのかもしれませんが、個人的にとても気になりました。

 

③桐島が結局どんな奴かよくわからなかった。

 

もっと周りの視点から人物像が描かれるかと思っていたのですが、物語は桐島を描くものではなく、桐島が部活を辞めたことで広がる波紋や影響の方に重きが置かれていて結局桐島が何者だったのかがよくわかりませんでした。

 

バレーはうまくてしっかりしていたのに、もっと惜しまれる人間ではなかったのか?頼っている後輩もいたのではないか?なぜあの彼女と付き合っているのか?腑に落ちない点がいくつかありました。

 

ここらへん、しっかり書いてほしかった。むしろてっきりそこがしっかり書かれると思ってて読んだので、ちょっと残念でした。

 

最後に

 

なんか若干酷評しているような気もしないでもないですが、けしてそんなことはなく読んでよかったと思いました。高校時代を思い出してどことなくむず痒くなったので、心境だったり学生時代の空気感がうまく書けていると思います。何よりブログのタイトルに使わせてもらっていたので、これで心置きなくブログが書けます(そういう問題ではない)。

 

興味のある人は是非手にとって読んでみてください。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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