さいちゃん、銀行辞めたってよ

元銀行員。転職 音楽 読書 日記 etc.

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雨の日の憂鬱を更に憂鬱にさせた不審な男がいた。

昨日は雨だった。特にこれといって激しい雨でもないし、むしろ降ったり止んだりの小雨だったのだけれど、やっぱり雨の日は少し外に出るのは億劫になる。だから私はおしゃれに本を読んでいたんだ。 

 

コンビニでマガジンをね。クールに読んでたんだ。そして読み始めて少し経ったくらいだったかな。ちょうど「はじめの一歩」に差し掛かった所だったと思う。

 

私のページを捲る手は自然と熱を帯び、展開に期待を膨らませていたんだ。突然左後ろから「あの~すいません」 て声をかけられた。正直私はビビったよ。店員さんが立ち読みはご遠慮くださいって言いにきたのかと、振り返る前の一瞬でそう思ったから。そして私は振り返ったんだ。でも立っていたのは店員さんじゃなかった。少し背が高くて髪の長いちょっとチャラい感じの男だった。恰好は上下ジャージで激ダサだった。

 

正直私はビビった。逆に店員さんじゃなかったことにビビった。むしろそこは店員さんでいてほしかった。誰やねんお前!て心の中で突っ込みを入れた。まぁホントは入れてないけれど。なぜならそんな暇はなかったからだ。男は間髪入れずに尋ねてきた。

 

「あの~ここら辺に有名な美容室っていうか有名な髪切る所ありませんか?」 

 

 

知るかボケぇ!!!有名ってなんやねん!!

 

私はあまりの展開に全くもってついていけてなかった。どう答えていいか全くわからなかった。だって知らなかったからだ。なんなんだ。「有名な」美容室ってなんなんだ。一般人に尋ねる質問間違ってるだろお前!!もし「困ったときに人に尋ねたい質問ランキング」みたいなものがあったら確実に圏外だ。だけど、その質問は百歩譲って認めるとしよう。

 

しかしそれにしても場所と人を選べボケぇ!! 

 

そこが街の中のいかにも美容室がありそうな場所で、人がたくさん歩いている通りとかならわかる。しかしここはコンビニの中!

 

イン ザ コンビニ!! 

 

どこの世界にコンビニの中で有名な美容室尋ねる人間がいる!だけど私も男だ。お前の過ちを赦そう。お前の質問は正しくて、お前の聞いた場所は適当な場所だったとしよう。 私があまりにもいかした髪型してたから聞いてみたんだろう?私がその時しっかりと帽子をかぶっていて髪型も何もあったもんじゃなかったにも関わらず、帽子に隠れたかっこよさを見破ったんだろう?

 

ただコンビニで何かを尋ねるとしたらレジの店員さんと相場は決まっている。何をもって隅でマガジン立ち読みしてる私をチョイスしたのだ。もはや理解をはるかに超えていた。そのまま私の思考回路は崩壊を辿ったし、そもそもそれ以前に私は人見知りなんだ。そんなわけのわからない質問されたら困る。だから私はこう答えた。

 

「いや…知りません」

 

だって他になんて答えようがある? 

しかし男は怯まなかった。

 

「あ~もしかしてここら辺の人じゃないんですか?」

 

何?お前ホントは私と世間話でもしたいの?でもその時の私にそんなこと判断できる余裕などあるわけがない。 

 

「え…はい。」

 

「あ~」

 

そう言って男は去って行った。

 

私は長い間そこに呆然と立ち尽くしていた。何も考えられなかった。

 

ただ何かやりきれない思いが私の心を支配していた。

 

雨は止むことはなかった。それからもずっと、心の中で降り続けた。

 

(fin)